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トム・ケリーとデイヴィッド・ケリーによる「クリエイティブ・マインドセット 想像力・好奇心・勇気が目覚める驚異の思考法」を読みました。
とても感銘を受けたので、書評というか、今回は本著に載っていた「あなたもクリエイティブになれる」ということを教えてくれる逸話をまとめたいと思います。
子どもがまた体験したくなるMRIの開発
世界的な電機メーカーのゼネラル・エレクトリック(GE)に勤めるダグ・ディーツはMRIの設計チームを率いています。
数年前、彼は2年半がかりで開発したMRIのプロジェクトを終えて、それが実際の病院に設置されるところを見学しに行きました。
そのMRIはデザイン界のアカデミー賞といわれるインターナショナル・デザイン・エクセレンス賞に出品されたということもあり、自画自賛の気分に浸っていました。
しかし、そのとき
スキャンの必要な患者がいるので、少し廊下に出て待っていていただけますか
と技師に言われたので廊下に出ました。
すると華奢な幼い女の子が両親の手を握りしめながら歩いてきました。
そしてその子はこの先に待ち受けるものを想像して怯えて、すすり泣きを始めてしまったのです。
すると技師は電話を取って、麻酔専門医を呼びました。
子どもの怯えがあまりにも激しいとじっとしていられないので、麻酔で鎮静させるとのことでした。
そして、このような子は、子どもの患者の実に80%にものぼるとダグは知ったのです。
そこでこれを変えなければいけないと思った彼はGEの上司に相談しました。
そして著者のデイビットが創設したスタンフォード大学のdスクールで開講している1週間のワークショップに参加することにしたのです。
ここで人間中心デザインの考え方を学んだダグは後に「アドベンチャー・シリーズ」と呼ばれるプロトタイプを開発したのです。
これはMRIの複雑な技術には一切手を加えず、MRIの外側、そして床、天井、壁など部屋のあらゆる面にイラストを施したものでした。
具体的には遊園地の乗り物にしてもおかしくないような海賊船のデザインをしています。
操作担当者は付属のマニュアルにかかれている通り
海賊船に乗って海を旅するから、船の中でじっとしていないとダメだぞ
と子どもに伝えます。
子どもは「船旅」が終わると部屋の反対側にある海賊の宝箱から、ちょっとした財宝を取り出すのです。
アドベンチャー・シリーズには宇宙船のデザインもあります。
この場合、装置の「ブーン」「バン」という騒音が大きくなる直前に、担当者は子どもに
これから宇宙船が超音速に入るぞ。よ~く聞いてごらん
と言うのです。
こう言い換えるだけで恐ろしい機械音も冒険の一要素に成り代わります。
今では海賊や宇宙船を合わせて9種類の「冒険」が用意されているそうです。
このデザインのおかげで麻酔な必要な小児患者は劇的に少なくなり、結果的に1日にスキャンできる患者の数が増えたので病院は大満足、患者の満足度も90%も上がったそうです。
しかし、ダグが何より満足しているのは数値改善やGEヘルスケアの利益増でもなく、「海賊船」MRIでスキャンを受けたばかりの6歳の女の子が母親と話しているときに、その子が母親のスカートを引っ張りながら
ねえ、お母さん。明日もこれに乗れるの?
と聞いたというエピソードだそうです。
そのたった一言で、ダグのすべての苦労が報われたと言います。
新生児の保温容器のイノベーションは1つの授業から生まれた
ラフール・パニッカー、ジェーン・チェン、ライナス・リャン、ナガナンド・マーティはdスクールのデザイン・フォー・エクストリーム・アフォーダビリティ(究極の安さを追求するデザイン)というコースを受講しました。
ここで彼らが取り組んだのは「途上国で使える低価格な保育器の調査とデザイン」というものでした。
彼らの中には早産の合併症や諸外国の医療機器デザインについて知っている人は一人もいませんでした。
早産児と低体重児は毎年1500万人いて、そのうち100万人も生後24時間以内に亡くなります。
改善しうる1番の予防は低体温対策です。
しかし、彼らが調査したところでは従来の保育器はたった1台に2万ドル(200万円ほど)することもあり、途上国に十分に普及しているとは考えられませんでした。
そこで彼らは部品を減らし、安価な素材にすることで安くするというアイディアを思いつきました。
ただ、人間中心デザインの肝であるエンドユーザーへの共感を飛ばすことはできなかったので、ネパール都市部の現代的な病院に観察しに行ったのです。
そこで目にしたのは不思議な光景で、寄付された保育器の多くが空っぽだったのです。
医師に聞いて、保育器の必要な赤ちゃんは大抵50キロも離れたお口の村々で生まれるため、病院の保温器を使う機会はなく、生死を分ける戦いは母親の家で起きているとのことを知りました。
電気工学の専門家のラフール・パニッカーが
おいおい、こいつは厄介だぞ…
と言うのも無理はありませんでした。
彼らは単に授業の一環で製品を作っていただけなので、クラスが終わるまでに何かを完成させるために、このまま病院向けの低価格保育器を作るか、人間中心的なアプローチに従って地方の母親向けに新たな解決策を練るべきか意見が割れたそうです。
悩んだ結果、授業助手のサラ・スタイン・グリーンバーグに相談すると彼女にこう言われたそうです
選択に直面したら、難しい方の課題を選びなさい。
それがエクストリーム・アフォーダビリティの「エクストリーム」の意味でしょう?
意を決した彼らが作ったのは小さな寝袋のような形で、その中に加熱で最大4時間保温できるパラフィン・パックが入っているプロトタイプ、後のエンブレイス・インファント・ウォーマーでした。
Embrace Infant Warmer
そしてプロトタイプをインドに持っていき調査した中で、改めて文化の違いによる重要な発見をしました。
インドの田舎の小さな村では、西洋の薬は効き目が強すぎると考えられていて、西洋医が処方した薬は半分くらいしか赤ちゃんに与えないと赤ちゃんの母親に言われたのです。
だから、37度までの加熱が必要と言われても、30度くらいまでしか加熱しないと思うと正直に告げられました。
生死を分ける場面でこのようなユーザーエラーが発生すると製品の存在意義に関わります。
そこで、もともと1度単位で表示できる体温計を設置していたのですが、適温に達すると「OK」と表示が出るだけの仕組みに変えました。
こうして製品は完成しクラスが終わりましたが、今度は今後どうするかという問題に直面しました。
メンバーのラフールとライナスは将来有望なスタートアップで働き始めていましたし、ジェーンはMBA取得後に就職先をいくつか見つけていました。
他には父親になったばかりでプロジェクトにフルタイムで参加することが難しいメンバーもいました。
しかし、見殺しにすることはできなかったのです。
メンバーのラフールはこう語ります。
ある意味では、見殺しにする勇気がなかったんです。
世の中に影響を及ぼせる方法が見つかったというのに、目の前に「いい就職の機会」があるから見殺しにするって?
そんな考えはとても受け入れられませんでした。
私は有意義な活動をするために、人生で最良の時間を捧げたかったのです。
彼らは社会的企業プログラムやフェローシップに応募し、プロジェクトの継続資金を集め、ソーシャル・ベンチャーとして法人化、インドでついに商品化しました。
メーカーとして低価格と高品質を両立し量産していくことに困難していたさなか、2010年12月にABCニュースで彼らの製品が特集されました。
番組ではバンガロールで生まれた体重2キロのニーシャという女の子の赤ん坊、そうエンブレイス・インファント・ウォーマーで救われた1つ目の命が紹介されました。
また、3人の子を産み3人とも亡くしたスダーサという女性も紹介されました。
これがあったら、私の赤ちゃんも死なずにいたのに…
製品をしげしげと見つめながら彼女は語りました。
これ以降チームは大成長を遂げ、社員は90名に、そして現時点で3000人の赤ちゃんを救ってきました。
更には9カ国のNGOパートナーと手を結び、GEヘルスケアと国際的な流通契約を結び、確実に今日もまた命を救っています。
SNSへの投稿が自分をクリエイティブと気づかせてくれた
広告業界で働いていたジル・レヴィンソンは自分のことをクリエイティブと思ったことは一度もありませんでした。
広告業界では広告に使う素材のことを「クリエイティブ」と言いますが、ジルからすると縁遠い排他的な一団のイメージだったそうです。
「クリエイティブ」と私のような彼らの補佐役には、明確な境界があったんです
と説明します。
しかし、ある日ジルはもっとクリエイティブになろうと決意しました。
彼女はファッションのアイディアやレシピ、DIYのプランといったオンラインコンテンツを視覚的に収集・共有できるSNS「ピンタレスト」に登録しました。
そしてピニャータ・クッキーのレシピをピン(掲載)しました。
InSites Consulting
クッキーは3層に分かれていて、真ん中の層には小さなエム&エムズ・チョコレートが隠れています。
色とりどりのクッキーは人びとの心を鷲掴みにしました。
1週間も絶たずに500回以上もリピン(再掲載)されたのです。
ジルはその後もピンタレストでいろいろなものを収集し、それが絶大な人気を集めました。
フォロワーが10万人を超えると、彼女はピンタレストそのものからも注目されました。
ピンタレストでは彼女の特集が組まれ、2012年後半にはフォロワーが100万人を超えたのです。
ピンタレストのようなサイトは創造性を表現するのにうってつけで、参加のハードルは恐ろしく低く全員にチャンスがあるのです。
「計画より行動」の精神が生んだiPad用ニュースアプリ「パルス・ニュース」
スタンフォード大学大学院課程に通うアクシャイ・コタリとアンキット・グプタは自身も認める「オタク」でした。
入学時のアンキットの履修科目は「論理」「オートマトン」「複雑系」「機械学習」といったプログラミング・クラスで占められていました。
だから、アクシャイからdスクールの入門クラス「デザイン思考ブートキャンプ」の話を聞いたとき、彼は技術一辺倒の世界からのいい「気晴らし」になりそうだと思ったそうです。
しかし、すぐにアンキットはこのクラスに没頭し、気晴らしは目の覚める体験へと変わり始めました。
アンキットとアクシャイのdスクール体験が最高潮を迎えたのはローンチパッド(発射台)というコースでした。
デザイン思考のコースは短期集中的なものがほとんどですが、その中でもローンチパッドは「過激」の域にまで達しています。
このクラスでは開講中に本物の会社を一から設立し、学期の終わりまでに法人化する必要があるのです。
2人は当時発表されたばかりのApple社のiPad用アプリを開発し、日々のニュースの閲覧体験を改善することにしました。
他にもアイディアはありましたが「10週間の期限」付きだったので、すばやくフィードバックが得られそうなアイディアを選んだのです。
アイディアが教授に認められてから、2人はこのクラスがどれだけ急ぎ足か、素早い実行が求められるかを悟りました。
なんと、最初の課題は実際に動くプロトタイプを4日以内に作るというものでした。
まさに死に物狂いでしたよ
とアンキットは言います。
一刻も無駄にできなかった彼らは近くのカフェに陣取り、1日10時間もそこで過ごしました。
その事実上のオフィスには格安の賃料に加えて、重要なメリットがありました。
それは、コーヒーを飲みながらニュースを読んでいる未来の顧客たちにフィードバックを得られたことです。
2人は最初、ポストイットで開発中のニュースアプリのユーザーインターフェースの流れをシュミレーションして、カフェの常連に意見を求めていました。
その後、iPadで実際のソフトウェアのプロトタイプができると、更に意見を集めやすくなりました。
当時はiPadが発売されたばかりで、みんなが興味を持っていました。その状況を利用したわけです
とアクシャイは言います。
彼は見せびらかすようにiPadをテーブルに置いておきます。
すると通りがかった人は必ず足を止め、
これが噂のiPadかい?
と声をかけてくるのです。
そうしたらしめたもので、最新版のプロトタイプを開いたまま渡し、相手の利用する様子を観察できました。
僕たちは何も言いませんでした。ただ相手の行動を観察しただけです。
でも、大きな価値がありました。
操作性の欠落がわかったわけですから。
時間を節約するため、アクシャイがユーザーテストに勤しむ間、アンキットがフィードバックを反映し、新しいソフトウェアバージョンを作っていきました。
1日に数百回もの小さな改良を施しました。
決して誇張ではありません。
インタラクションのパターンからボタンのサイズまで、あらゆる面を変更したんです。
とアクシャイは語ります。
このプロセスは功を奏し、2週間前には
こいつはクソアプリだ
と言われていたものが、
これはiPadに最初から入っているのかい?
と聞かれるまでになりました。
集中的に素早い改良を繰り返した結果、2010年にパルス・ニュースはリリースされました。
従来の配信元と細心の配信元の療法から記事を収集できる高品質なニュースリーダーです。
リリースから数ヶ月後のAppleのWWDC(世界開発者会議)ではスティーブ・ジョブズ本人がメイン・ステージでパルスを披露するほどになったのです。
2人はまだ学生でしたが、世界中の注目を集め、現在パルスは2000万を超える人びとにダウンロードされ、Appleの最初のApp Store殿堂入りアプリ50傑にも入りました。
そして2013年にはLinkedinに9000万ドル(90億円程度)で買収され「LinkedIn Pulse」となったのです。
自分とは無関係のサービスを「今日中」に作ってできたバスの待ちぼうけ解消サービス
マンハッタンのラジオ局WNYCの編集責任者のジョン・キーフはある日同僚から
母親が次のバスがいつ来るのかわからないで、街のバス停で何度も待ちぼうけを食わされてるんだ
という話を聞きました。
もしあなたがニューヨーク市都市交通局の職員だとして、上司からこの問題の解決を指示されたら、いつまでに新しいシステムを稼働させると約束するでしょうか。
ジョンは交通局の職員でも何でもないのに
今日中になんとかするよ
と同僚に言いました。
そして24時間足らずで、彼はサービスの実働プロトタイプを開発したのです。
そのサービスは、バスの乗客があるフリーダイヤルの電話番号(646-480-7193)にかけて、バス停の番号(306619など)を入力すると、次にやってくるバスの位置を聞くことができるというものです。
なぜ彼がこれほどまでに短期間でアイディアに命を吹き込めたのかというと、そこには既存のサービスの独創的な活用方法がありました。
彼はトゥイリオから月額1ドルでフリーダイヤルの電話番号を購入しました。
トゥイリオはウェブプログラムと電話番号を関連付けられるサービスです。
そして彼はちょっとしたプログラムを書いたのです。
このプログラムバス停のコードをニューヨーク市都市交通局のサイトに送信すると、リアルタイムの位置データにアクセスし、出力結果をテキストから音声に変換するものでした。
すると数秒後に
5番街4丁目に到着する次の北行きのバスは、9つ前の停留所を走行中です
などというメッセージを聞くことができるのです。
交通局のサイトにスマートフォンでアクセスすれば同様の内容は知ることができましたが、それは同僚の母親には難しい操作だったのです。
ジョンはWNYCの仕事でもこの考え方を実践しています。
デザイン思考を実践する最も効果的な方法は、言うのではなく見せることだと気づきました。
口で説明する代わりに、「来週には結果を見せるよ」と言うんです
と彼は話します。
たとえばdスクールの学生が考えた朝のニュース番組のアイディアは、火曜日に考えられて、その週のうちに企画中にも関わらずニューヨーク市でテスト放送されたように、彼はこの鉄則を守っています。
行動を起こせば政治家も動かせる
ある日の夜、著者のトムは自転車での帰宅中にメンローパークの老朽化したバス停が取り壊されて、太陽光発電式の深緑色の待合所に置き換えられているのに気づきました。
市民サービスは向上したが、その待合所の場所が良くなかったのです。
以前と違って、通行人で賑わう歩道に2メートルほど突き出して設置されていました。
その歩道は幼い小学生が大勢で自転車に乗って小学校に通う通学路でした。
秋学期がそのまま始まれば歩道に突き出した重量何百キロかの緑色の金属は小学生の日々に大きな問題を起こす可能性があると気づいたのです。
普段ならそのまま見て見ぬふりをしていたかもしれません。
しかし、前述のジョン・キーフの「当日解決する」話が頭に残っていたトムは路肩に自転車を停め、携帯電話で写真を撮り、その夜のうちに生まれて初めてその町の市長室にメールをしてみたのです。
返事が来るかもわかりませんでしたが、翌朝10時になると市長から前向きな返答があり、メールには公共事業の責任者まで入っていました。
そして1週間後には大きなクレーンがバスの待合所を邪魔ではない位置に移動させているところをトムは出勤途中に目にしたのです。
「傍観者になるな」このエピソードはそう教えてくれます。
昨日まで「こうだったらいいのに」と思っていたものは、「今日中になんとかできるかも」と考え方を変えてみましょう。
「やってみる」と「やる」の違いを示す簡単なゲーム
時として「やってみる」という言葉は、断固たる行動ではなく、中途半端な実行の約束に終わってしまうことがあります。
これを簡単なゲームで実証しているのがdスクールのアカデミック・ディレクターのバーニー・ロスです。
まず彼は飲料水のボトルを掲げ、
これを奪い取ろうとしてごらん
と学生に伝えます。
80代の老人を前にすると学生たちは大抵ボトルを奪い取るのを躊躇します。
初めは全くうまくいきません。
大柄な20歳の学生や腕っぷしの強いCEOたちがボトルを奪い取ろうとすると、ボトルを握りしめる彼の手は鉄のように固くなるのです。
するとバーニーはもう一度告げます。
「奪い取ろうとする」のではなく、奪い取ってみなさい。何が何でも。
すると次の人物はバーニーにぐっと詰め寄り、手からボトルをもぎ取るのです。
このとき何が変わったのか。
バーニーによると「してみる(try)」という言葉には「今日は試すだけ。本格的に行動するのはまた今度」というちょっとした言い訳が潜んでいると言います。
眼前の障害物を倒し、目標を達成するには「今すぐ全力で」やらなくてはならないのです。
スターウォーズに登場するヨーダもルーク・スカイウォーカーにこう告げています。
やるかやらないかだ。「やってみる」などない
低予算の映画という制約が奇想天外なアイディアを生み出す
映画監督フランシス・フォード・コッポラは「ゴッドファーザー」で有名です。
しかし彼は低予算のインディーズ映画を生み出したことでも成果を残しています。
あるとき彼は「コッポラの胡蝶の夢」という低予算の映画プロジェクトに取り組んでいました。
その最中、マルタ共和国の設定で撮影していた際、台本通りにするには右ハンドルのタクシーが必要でしたが、ロケ地がルーマニアだったため、手配できるタクシーが全て左ハンドルだったのです。
大規模な予算の映画だったら他国から空輸でタクシーを運んでいたところですが、コッポラはメイクアップチームに頼んで、その日の撮影中だけ俳優の髪を反対側で分けてもらったのです。
次に、小道具チームを呼んで、タクシーの屋根の看板とナンバープレートを左右反対に印刷してもらいました。
カメラが回るといつもどおり撮影し、後で映像を左右反転させたといいます。
彼の巧妙かつ超格安な「特殊効果」に気づいた映画ファンは1人もいなかったのではないでしょうか。
建築家のミース・ファン・デル・ローエが残した「少ないほど豊かである(Less is more)」という格言を胸に留めて「制約をどう生み出すか」、「それをどう解決するか」を考えてみるのもいいと思います。
1時間で作った簡単動画でチームを説得
おもちゃ発明家のアダム・スケイツとゲーム専門家のコー・リータ・スタッフォードは共同で「エルモのモンスター・メーカー」の開発プロジェクトに取り組んでいました。
Elmo’s Monster Maker
Sesame Street¥360posted withアプリーチ
これは子どもが自分でモンスターをデザインできるiPhoneアプリです。
開発が中盤まで進んでいた中、彼ら2人はシンプルな音楽に合わせてエルモにさまざまなダンスを踊らせる機能を思いつきました。
2人はこの機能に興奮していたのですが、他のチームメンバーはあまり乗り気ではなく、最終版からこのダンス機能はカットされそうになっていました。
ここで2人は折れることなく、ねばりを見せました。
セサミ・ワークショップとの電話会議まであと1時間というときに、手元にあるものでダンス機能のプロトタイプを作ることにしたのです。
アダムは大急ぎでiPhoneの特大画像を印刷し、発泡スチロールの板の上に張り、画面のある部分を四角く切り取りました。
IDEOU
そしてアダムは巨大「iPhone」の後ろに立ってダンスし、コー・リータはノートPCのウェブカメラをアダムに向けて撮影しながら、撮影画面の中に片手を入れて子どものアプリ操作を指で再現したのです。
撮影は1度きりで、簡単な編集を加えてチームメンバーへ届けられました。
その動画は楽しくてチームメンバーの心を惹きつけました。
アイディアを言葉だけで説明するよりずっと説得力があったのです。
現在、App Storeで「エルモのモンスター・メーカー」をダウンロードすれば、2人がその日の午前中に1時間でプロトタイプを作ってプレゼンし、開発にこぎつけた機能がきちんと搭載されています。
存在しないゲームの需要を広告クリックでカウントするゲットー・テスト
クリエイティブな考え方をすればリリースしないと分からない需要を予測することもできます。
ソーシャルゲーム会社のジンガは社内でゲットー・テストと呼ばれている手法で新しいゲーム・コンセプトの需要を予測しています。
これはコードを1行も書かないうちに、人気のウェブサイトにゲームのティーザー広告を掲載し、広告のクリック数で潜在顧客をカウントするというものです。
同じような例は他にもあります。
AmazonがKindle書籍のレンタル機能を発表した数日後、イギリスのあるプロダクトマネージャーは電子書籍の貸し手と借り手を結びつけるサイトにどれだけ需要があるのかを調べるため、Facebookグループを立ち上げました。
ここで4000人超のメンバーを獲得すると、彼女は自身を持って独自のレンタルサイトを設立し、そのわずか2週間後には現在のBooklending.comの運営が始まったのです。
「失敗」は存在しない
エジソンが言う成功の基準とは
エジソンは歴史上最も有名で多才な発明家の一人ですが、彼が失敗を創造プロセスの一部とみなしていたのも有名な話です。
彼はタメになる教訓が得られさえすれば、それは無駄ではないと語ります。
発熱電球を発明できたものも、無数の失敗を繰り返して「学習した」からだと言うのです。
エジソンによると
真の成功基準とは24時間に詰め込める実験の数だ
とのことで、24時間区切りで語るところが彼の情熱を窺わせますね。
冒頭でご紹介したGEはもともとエジソンが起業した会社でもあり、つながりを感じますね。
ジャグリングを始める上で一番最初にすべきこと
ジョン・キャス・キャシディは生涯現役のイノベーターで、出版社クラッツ・プレスの創設者です。
彼が自著「ぶきっちょのためのジャグリング入門(Juggling for the Complete Klutz)」で最初に教えているテクニックは、2個のボールのジャグリングでも1個でもなく、「落とす」ことです。
3つのボールを空中に投げ、そのまま落とすだけで、それをひたすら繰り返します。
ジャグリングを学ぶにあたって不安は失敗から生まれます。
失敗とはボールを床に落としてしまうことです。
そこでキャスは失敗に慣れさせようと落とすことを落とさないことより当たり前にしたのです。
投資の失敗を大公開:アンチポートフォリオ
自分の失敗を認めることは大成功へと続くこともあります。
100年以上の歴史を持つベンチャー・キャピタルのベッセマー・ベンチャー・パートナーズのウェブサイトにはお決まりの投資先起業一覧が並んでいます。
言い換えれば成功実績の自慢です。
しかし意外なのが、ここから1クリックのところに投資の失敗例や見通しミスの例がカタログとして掲載されていて、これを「アンチポートフォリオ」と名付けています。
ベッセマー社は名高い歴史がある分、他社とは比べ物にならないくらいの数の大失敗もしてきたと説明しています。
例えば大手決済サービス会社Paypalの投資機会を逸した後、Paypalが15億ドルで買収されたり、世界最大の航空貨物輸送会社FedEXに投資するチャンスを7回も逃していたりします。
FedEXは現在、企業価値が300億ドルにもなります。
ベッセマー社の中でもアンチポートフォリオを最も気に入っているのがパートナーのデイヴィッド・コーワンです。
ラリー・ページとサーゲイ・ブリンがGoogleを設立したシリコンバレーのガレージに歩いていけるところに、彼は住んでいました。
あるとき、2人にガレージを貸していた女性がコーワンと親しかった縁で、
検索エンジンを作っている超優秀なスタンフォード学生がいるんだけど
とコーワンに紹介しようとしたところ、彼は
ガレージの側を通らずにこの家から出るにはどうしたらいい?
と答えて、2人には会おうとしなかったそうです。
アンチポートフォリオのアイディアは現在、冷静な観察から教訓を学び取ろうとする人びとの間で流行になっているそうです。
人はなぜクリエイティブになれないのか
幼少期の残酷な経験がクリエイティビティを奪う
評価を下されることを恐れると、新しいトライをしなくなってしまいます。
そしてその恐怖は幼い頃に体験してしまいます。
本来子どもは大胆ですが、あるときその恐怖を経験するのです。
著者のデイヴィッドが小学3年生のとき、親友のブライアンは図工の時間に粘土で馬を作っていました。
すると突然、女の子の1人が彼の作っているものを見るなり、
うわっ、下手っぴ。ぜんぜん馬に見えない
と言ったのです。
ブライアンは肩を落として、すっかりやる気をなくして、粘土の馬をぐちゃぐちゃに丸めて容器に投げ込んでしまいました。
これ以来デイヴィッドはブライアンが創作に取り組むのを見たためしがないそうです。
このエピソードをデイヴィッドがビジネスパーソンの聴衆の前で紹介すると、必ず後で誰かがやってきて、教師や親、友だちに同じようにぴしゃりと言われた体験を打ち明けてくるそうです。
彼らは人に評価されるくらいなら、いっそ始めからゲームを降りることを選ぶようになってしまいます。
作家で研究者のブレネー・ブラウンはこのような恥の体験について調べた結果、3人に1人が「創造性の傷」を抱えていることを発見したそうです。
子どもが初めてすべり台をすべる様子からわかること
公園で子どもが初めてすべり台をすべるとき、ほとんどの子どもにとってそれは怖いものです。
最初は階段を登ることすら、ままなりません。
いったいどうすればいいの?
と言わんばかりの恐怖の表情を浮かべます。
子どもの中には半分だけのぼってやっぱり怖くなって引き返す子どももいます。
しかし、他の子どもが「わーい!」と叫びながらすべる様子を見て、ようやくすべり台のてっぺんまで登り、スタートを切ります。
すると魔法が起きて、恐怖が興奮に、そして喜びへと変わります。
あまりの速さに目をまんまると見開くこともあり、そのうちに地上へ降りてくると子どもは満面の笑みを浮かべ、階段のところまで走っていき、またすべり降りるのです。
これが示すのは、最大のハードルは初めてすべる瞬間にあるということです。
これは補助輪なしで初めて自転車に乗るときと似ています。
最初さえ乗り越えれば人は恐怖から解き放たれるんですね。
クリエイティブになるためには
しなやかマインドセットが困難を克服する
スタンフォード大学の心理学教授キャロル・ドゥエッグは「学習や成長が可能だと信じている」性格をしなやかマインドセットと名付けました。
このマインドセットの持ち主は彼女の膨大な研究によると才能や適性、IQに関係なく努力や経験で能力を伸ばせるそうです。
これと正反対の性格をこちこちマインドセットと名付け、行動の違いを検証した結果があります。
香港大学では授業や試験をすべて英語で行うため英語に難のある新入生は圧倒的に不利な立場にあります。
この1年生に対してドゥエッグが語学力とマインドセット評価のテストをしたあと、
英語力アップが必要な学生のための講座を設けたら受講しますか
と尋ねたところ、しなやかマインドセットを持つ学生は迷うことなく受講を希望したと言います。
しかし、こちこちマインドセットの学生は「英語講座にあまり興味を示さなかった」のです。
つまり、隠れた弱みをさらけ出すくらいなら長期的な成功の可能性を諦めるという道を選んだのです。
このようなちょっとした考えと行動の連続が自分自身に対する自身をなくさせていくのは明らかです。
クエスチョン・ゼロで問題を捉え直す
IDEOのチームは数々の精密医療用具や手術器具をデザインしてきましたが、あるときクライアントから「医師は今までの副鼻腔手術用の切開器具では手が疲れる」という不満を聞きました。
このとき「どうすれば器具をもっと軽くできるか」という疑問を一度掲げました。
しかし、IDEOのチームは「どうすれば長時間の手術でもラクに持ち続けられる手術器具を作れるか?」と問題をリフレーミングしたそうです。
この結果、重さではなく持ちやすさに照準を移し、器具をデザインしました。
Diego Powered Dissector System
こうして完成した器具は従来よりもしろ数グラム重くなったかもしれませんが、外科医には好評だと言います。
このように枠組みを捉え治した問題を「クエスチョン・ゼロ」とIDEOのミュンヘン・オフィスでは呼んでいるそうです。
簡単でいいから絵を描いてみよう
言葉で説明すれば延々と時間がかかることでも、スケッチ1枚で事足りることも多いです。
「描いて売り込め! 超ビジュアルシンキング」の著者でビジュアルシンキングの専門家であるダン・ロームによると、ビジネスパーソンの25%はマーカーさえ手にしたがらないと言います。(ダンは彼らを赤ペンタイプと呼んでいます)
また、50%の人びとは黄色ペンタイプで、せいぜい他人の絵にハイライトを入れたり、細かな点を付け加えたりするくらいしかしたがらないそうです。
彼はどんな絵でも描ける基礎力は誰にでもあると主張していて、たとえば相手に伝えたい内容に応じて、3種類の人の描き方を紹介しています。
彼と同じ席でランチを食べると、テーブルクロスにひっきりなしに絵を描いてくれるそうで、一緒に時間を過ごすだけで帰る頃には物事を視覚的に伝える自信が少し付いているというから不思議ですね。
行動するための刺激:周囲の圧力を生み出す
著者のデイヴィッドは同じ部屋に誰かがいると活動を始められることに気づきました。
その人がフィードバックやアイディアをくれなくても、存在という圧力があるとちゃんとやろうという気持ちになるのです。
例えば、パーソナル・トレーナーや他のトレーニーがいるとジムに行く気になるのも、カフェでブログを書いていると他の客がいて自宅より捗るのも同じ原理です。
旅行者のように考える
ここでクリエイティブになれる方法を1つご紹介します。
「旅は視野を広げる」というのはよく言われることですが、これには深い心理が潜んでいます。
外国に行くと道路標識や郵便受け、レストランでの支払い方法など細かい部分まで自分の国とは違うので、色々なものが斬新に感じられます。
これは「旅に出ると頭が冴える」のではなく、「旅に出ると新しい道の世界を理解しようと懸命に努力する」からなのですね。
シャーロック・ホームズのような感覚です。
クリエイティブな人は自分とは違うモードで動いているのではないかと思えることがありますが、それは自分がたまにしか入れないスイッチをずっとオンにしているからなのです。
「旅行者の感覚」は言い換えれば「子どもの感覚」でもあります。
何でも新鮮でたくさん質問し、全てを吸収していきます。
「あれはもう知ってるよ」ではなく「あれって面白くない?」と考えるわけです。
dスクールでは見慣れたものを再発見することの力を知ってもらうため、よく経営幹部たちをガソリンスタンドや空港といった場所に連れて行くそうです。
そこで初めて気づくことは決して少なくないそうで、たとえば「念の為」登場時間の4時間も前に到着し、ゲートの前に1人で座っている乗客や、機内に乗り込むときに飛行機の横っ腹を3回ポンポンポンと叩いて安全祈願のゲン担ぎをしている人に気づくと言います。
トイレに共同黒板を設ける
インスピレーションを探す方法はいくらでもあります。
その一つが想定外の場所で質問することです。
IDEOのサンフランシスコ・オフィスでは洗面所の1つに床から天井まである黒板を設けています。
これはカジュアルなフォーラムのような役割をしていて、例えば「今年できそうな面白いことは?」とか「友人に勧める健康的なおやつは?」といった質問を書いておくのです。
この黒板の中身は新鮮さを保つため、定期的に書き換えられます。
時には空っぽの水槽など未完成の絵を描いておき、書き込みを促すこともあるそうです。
F1が医療に貢献するとき
インスピレーションを得るには文化の全く違う組織でアイディアを探すのも効果的です。
ロンドンにあるグレート・オーモンド・ストリート病院の小児集中治療室の責任者がこの方法を実践しました。
彼はテレビでF1のピット・クルーを見てインスピレーションを得たのです。
チームが見事な連携で作業をこなし、ものの数秒でレース・カーを整備する様子に感動しました。
それとは対象的に、彼の病院では手術室から集中治療室への患者の引き継ぎがめちゃくちゃな状態でした。
そこで彼は常識破りの方法を取って、フェラーリのピット・クルーに病院職員の指導を依頼したのです。
技法を様々取り入れた中で、例えば必要な会話を減らすために全ての役割、作業内容やタイミングについて緻密に定めたり、チェックリストを追いながら患者の情報を伝えるようになりました。
結果的に技術的なミスが42%、情報伝達のミスが49%も減ったと言います。
偶然を味方につける
フランスの科学者のルイ・パスツールは「偶然は心構えのある者に味方する」と訴えたことで有名です。
実際、発見の歴史はセレンディピティ(偶然の発見)に満ちています。
例えばチャールズ・グッドイヤーは誤ってゴムと硫黄の混合物をストーブの上にこぼしたときに加硫法を発見しました。
しかし、あなたはもしグッドイヤーと同じことをしでかしたときに、「発見」をすることができるでしょうか。
すぐに家中に匂いが充満し、妻や両親が帰ってくる前に大慌てで掃除しようとしませんか?
このときに、ちょっと時間を置いて発見の意味をじっくりと理解しなければそれはそこまでです。
同じように科学者が不運な出来事や失敗から突破口を見出したことで生まれた発見は数多く、ペニシリンやペースメーカー、サッカリン、安全ガラスなどが挙げられます。
パスツールが言いたかったのは「偶然は、何度も実験を行い、想定外の出来事が起きたときに細心の注意を払う者に味方する」ということなのです。
この種の発見は科学の世界だけで起きるわけではありません。
会議のちょっとした会話や長距離のフライトで隣の乗客から得たヒントなど、偶然の出会いは様々なところに転がっています。
クリエイティブ・コンフィデンスとは?
文字通り「想像力に対する自身」のことで、自分には周囲の世界を変える力があるという「自身」こそが最もその人の想像力を高める要件だと書かれています。
これまでIDEOでたくさんの発明をしてきたトムとデイヴィットが言うからこそ説得力がありますね。
こちらの記事でご紹介した逸話にグッときた方はぜひ読んでみてくださいね!
今すぐクリエイティブになるための行動を始めよう
いかがでしたでしょうか。
自分もやればできる、何かやらなくては!という気持ちが湧いてきませんでしょうか。
エネルギーが満ち溢れた方がすべきことは色々ありますが、いくつか道を示したいと思います。
- 転職をする
1つは転職を考えるのもいいと思います。
あなたの現在の環境がクリエイティビティを発揮できるとは限りません。
まずは定番のリクルートエージェントに登録して、様子を見てみるのもありだと思います。
- ブログを始める
ブログを初めて世の中に自分を表現する場を持つのもとてもよい方法です。
おすすめはWordPressでブログ制作、さくらインターネットでサーバー取得とドメイン取得、A8でアフィリエイトという王道パターンです。
- 投資を始める
お金を貯めて人生を変えたい!という方は投資もおすすめです。
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取り引きをしている人も多く、スマホ1つでできるのも魅力ですね。
他にも投資は色々と種類があるので、こちらの記事も参考にしてみてください。
- 本を読む
まずは色々な情報を収集しよう!と思った方には本を読むのをおすすめします。
今回ご紹介した本を含め、私のおすすめ本はこちらの記事でご紹介しています。
また、2018年最新のおすすめビジネス本はこちらにまとめています。