『英語の害毒』感想~英語はよくない?



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こんにちは、言語学が好きなきしんです。

今回は私が大学在学中に講義を受けていた永井忠孝先生の本、『英語の害毒』の感想をお伝えしたいと思います。

 

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まず感想をざっくりまとめると「面白かった!」に尽きるのですが、

以下いろいろ感じたことを書かせて頂きます!

 




 

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言語×経済学

まず、言語というものの捉え方が、「言語×経済学」の自分の考えとぴったりマッチして、とても納得出来ました。
例えば、言語と通貨の類似性がP.35で述べられてます。

これはクルマスの『ことばの経済学』でも述べられている観点です。

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価値を道具的価値と装飾的価値に分ける(P.85)のも、クルマスの前掲書に書いてありました。

ただ、価値の2面性はクルマスでは「使用価値」と「交換価値」と訳されていて、

あまりピンときていなかったので、頭を整理出来ました。

 

それに加えて、言語の価値を実用性と言語相対性理論の2点で語る点(P.46,96)は、

私が卒論で言語多様性の価値評価のために使った考え方です。

とても共感できましたし、言語学者がこのように著していると安心です。

 

データでとらえた言語

また、2つめの感想として、普段なんとなく感じていることや聞いたことがあるくらいのことをしっかり科学的なデータとして載せていらっしゃるので、「そうそう!」とか「そんな実験があったんだ!」と再発見がありました。

それは例えば、

多くの仕事がコンピュータに奪われるという予測(P.47)や、

日本人が外国の文化をいいものと捉えやすいこと(P.84)、

日本語と英語で同一人物の考え方が変わる点(P.96)、

日本人は英語を話すことが国際人の要件だと思っている点(P.185)などです。

 

余談ですが、自分は「一芸に秀でる」ことが国際人の要件だと思います。

これはどこかで聞いた受け売りなのですが、

英語が話せなくても、社交性がなくても、世界のどこからも求められるスキルがあれば、自然と声がかかるものだということです。

 

目からウロコの事実

3つ目の感想としては、単純に今まで知らなかった目からウロコの事実を知れました。

ニホン英語が、まさか英米英語より伝わりやすい(P.74)だなんて考えたこともありませんでした。

ただ、これは同じ情報量、スピードで会話してもそうなるのかは疑問でしたね。
あと、方言への関心が低いほど、ニホン英語を評価しないという話(P.186)も、

興味深かったです。

言語の多様性に触れないと画一化された言語こそ是だと感じてしまうのでしょうかね・・・

悲しいことです。

 

偏った議論

最後の感想としては、僭越ながら、やや偏った議論をしているように感じました。

おそらく、永井先生の書かれた意見は少数派でしょうし、「こんな考え方もあるんだ」ということを明示的に伝えるためには、あえて寄った主張を通したほうがよいのだと思いますが、

例えばモデルや英語教師になぞらえて日本人の仕事が取られるとする点(P.163)は、

職業によって求められる能力が違うことを度外視している気がします。

 

また、英語の装飾的価値を強く感じる人は道具的価値が本当にあるのか分かっていないのではないかという考察(P.88)は、

そのようなことを言う人は当たり障りないことを言いたいだけなのではないかと思いました。

 

アンケートで複数回答可の選択肢を与えて、「なぜ英語を学ぶのか」を聞けば分かることだと思います。

 

他には、覇権がなくなる(P.30)という点についてです。

これは、授業でも仰っていましたね。

ただ、英語の広がりは、今までのスペイン語とやオランダ語とは比べ物にならないことがすごいのではないでしょうか。

スペイン語やオランダ語が最も栄えていたのは大河ドラマに出てくるような時代で、

誰もが当たり前のように外国語学習をする時代ではありませんでした。

それが今は、科学技術の発展で地理的距離があまり関係なくなってきました。

このタイミングの良さが、英語の強さを決定づけている気がします。

このことがとても重要で、アメリカ国内におけるスペイン語との競合性はあまり議論の本質ではない気がします。

(それでも英語はアメリカ国内で第一公用語の地位を失うことはないと思いますが)

 

機械翻訳の発展による実用性の減少(P.39)は、

直接コミュニケーションの良さを無視してしまっていると思います。

商談に通訳を通せるほどの大企業が英語を話せる人材をわざわざとるのは、

直接話すことによる意思伝達力の強さがあるからだとおもいます。

「相手の言っていることを理解できる」ことと「相手の言っていることを感じることができる」ことの違いのような、そういうものがある気がします。

 

また、ご著書には英語の重要性が増すことを裏付けるようなデータをわざと欠かせていると感じました。

私が読んだ本に、井上史雄の『経済言語学論考』というのがあるのですが、

そのP.90に「将来必要な言語の世界推計」(日本語観国際センサス)というのが載っていて、

英語は2位の中国語に5倍ほどの差をつけて圧倒的一位になっています。

(これはあくまで将来必要「と思う」言語なので、説得力には欠けますが…)

 

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どうでしょうか。

実はこの文章は私が実際に永井先生に感想として送った文面を流用しているので、言語学に明るくない方には、専門用語ばかり使って分かりづらかったかと思います。(すみません)

ただ、「英語ってホントにいいものなの?」という疑問に一番答えてくれる本だと思うので、ぜひ読んでみてくださいね!



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